人間は昔から犬猫と寄り添って生きてきた。さかのぼっては、動物たちは狩猟の補佐をしたり、神としてあがめられたり、後の時代にはペット、さらには家族の一員というように、その関係は変化しながら続いている。そして今、私たちは動物に「癒し」を求める時代を迎えた。
ニュージーランドには、企業によって、ペット同伴での出勤を奨励しているところがある。職場内の雰囲気が和やかになり、生産性も上がるというのが理由だ。また老人ホームでも、入居者の孤独や無力感をやわらげ、単調になりがちなホームの生活にアクセントを与えてくれると、動物が飼われている。 大学構内でペットを抱きしめる 動物に安らぎを見出しているのは大学でも同じだ。国内の各大学では、犬や猫とのスキンシップの会が定期的に催されている。これは学生たちが期末試験を控えた時期、効率よく勉強して良い成績を収められるよう、学生会が、学生のストレス緩和のために行なっている支援イベントのひとつだ。地元の動物保護団体のスタッフが、動物をキャンパスに連れてきてくれるのである。
徹夜で必死に勉強したり、生活費を稼ぐために勉強時間を削ってアルバイトしたりと、学生にもいろいろとストレスはある。そこへ安らぎを与えてくれるのが犬や猫だ。動物たちをなでたり、抱いたり、おもちゃで一緒に遊んだり。学生たちの疲れ切った表情は笑顔に変わり、動物を赤ちゃんのようにあやしては喜びにあふれる。このリラックスしたひとときを忘れないようにと、かわいい動物たちを写真に収める者も少なくない。
スキンシップを経験した学生のひとりは、「さっき子猫を抱いたら、ゆったりした気持ちになれた。これで落ち着いて試験勉強が続けられる」とうれしそうだ。また、主催した学生会のメンバーは、「いつものキャンパスと違って、くつろいだ雰囲気だった。学生は試験のことを一時忘れ、リセットできたのではないか」と、満足そうだ。
動物保護団体のスタッフは、「人間は動物と触れ合うと、心拍数や血圧が下がり、呼吸がゆっくりになることが医学的に証明されている」と、動物のもつヒーリング・パワーを説明する。しかし、それだけではないだろう。学生たちはスキンシップを通して実家に残してきたペットや、幼少時にかわいがっていた小動物を思い出す。個人的な思い出と癒し力の相乗効果で、よりリラックスできるのに違いない。
(書き下ろし)
写真:学生は皆、犬猫にメロメロ。大学によってはセラピー犬を招くところもある。 © VUWSA