1年のうち数カ月は米国で暮らすため、米国にはたくさんのママ友がいる。最近、メールや電話で米国人のママ友たちと「宿題と時間管理術」に関して意見交換をすることが多い。きっかけは「宿題で子どもに時間管理術を教えている」という話を聞いたからだ。子どものうちから時間管理の能力を植えつけようというのが最近の米国のトレンドらしい。米国には「時間管理」の重要性が日本以上に根付いている。すべき仕事を生活習慣化すること(ルーティーン化)の重要性は、出産直後から子育ての課題として語られるほどだ。
睡眠も訓練
「スリープトレーニング」もその一つだ。寝たいだけ寝かせておけばいいという日本流に対して、昼間の時間は「起きる時間」と教えるために、子どもを無理に起こせと指導するのが米国流だ。幼稚園でさえ、分刻みのプログラムが決められている。
幼児期からの時間管理教育を重視する米国で、「宿題」をセルフマネジメントの技術習得の道具に使う、という考え方が出てきたのもうなずける。
「Goal Setting for Students(学生のための目標の立て方)」の著者である教育コンサルタントのジョン・ビショップ氏は、教師向けのオンラインサイトの中で「宿題の利点10(*)」を列挙している。この中で「宿題は時間管理術を教えることができる」は最初の項目に挙げられている。
タイマー使って宿題
小学校の教員である友人のトレーシーは、小学3年生の長男を筆頭に、3人の息子を持つ母親だ。そんな彼女は、時間管理教育を実践している一人。
具体的には、毎日同じ時間、同じ環境で机に向かわせることで「習慣化」を促す。そして日々の宿題を、例えば「5問を15分以内で解く」といった「細かい目標」に仕切り、タイマーを用いて時間内に集中して勉強に取り組ませることで時間管理能力を鍛えるのだ。
15分以内に解けても、解けなくてもその後は休憩。「問題が解けるまで座らせておく」ことはしない。
取捨選択を経験
米国のエリート社会では、時間管理力が問われる。皆に平等に与えられた1日24時間をいかに有意義に使えるかが、社会的成功のカギになるからだ。
ハーバード大学に2人の息子を合格させたジューンは、学業、スポーツ、社会活動に加え、趣味の音楽にも時間を割けるだけの<時間管理にたけた>子どもたちを育てることに成功した。
彼女は、子どもたちに宿題を通じて成功するために必要な「時間管理術(Time Management)」「整理術(Organization)」「優先順位付け(Setting Priorities)」を教えてきたと語る。
宿題や課題に取り組む際、「何が最も重要な焦点・学ぶポイントかを探り、それを集中してこなす。その上で<時間があれば>より内容や問題を深く掘り下げる」といったプロセスを子どもたちに意識させてきたという。こうした「時間制限を意識して、物事の取捨選択をさせる」経験は、将来さまざまな形で応用が利く。
具体的には、毎日同じ時間、同じ環境で机に向かわせることで「習慣化」を促す。そして日々の宿題を、例えば「5問を15分以内で解く」といった「細かい目標」に仕切り、タイマーを用いて時間内に集中して勉強に取り組ませることで時間管理能力を鍛えるのだ。
生きる力
こうした教育は、家庭での教えが重要になる。そして日々出される毎日の「宿題」を、生きる力を身に付けるためのツールとして使うという考え方自体は、意識一つで誰でも取り入れられる。「宿題が嫌い」と感じている子どもに、新たな目線を与えることによって、人生を切り開くきっかけを作ってやることさえできるのだ。(東京在住ジャーナリスト、寺町幸枝=共同通信特約)
(共同通信47News デジタルアイ 8月16日掲載分: