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岩下 慶一:コロナ時代の意外なヒット商品 レクリエーショナル・ビークル


人気のいないタイムズスクエア©︎Steve Guttman NYC


ワクチンの開発が報じられ、一部には安堵感も広がっている新型コロナウィルス。だが米国の状況は改善どころか悪化の一途を辿っている。今月8日にはついに感染者数が累計1000万人を超え、全米各地で第3波が拡大している。そんな中で意外な商品がヒットしている。外部と接触せずに移動できるレクリエーショナル・ビークル(居住用スペースの付いた自動車、日本で言うキャンピングカー)だ。


新型コロナの蔓延は、米国人のライフスタイルを大きく変えた。当初はマスクにさえ抵抗感を示していたが、事態が深刻化してくると流れは変化した。人々はマスクをつけ、テレワークが浸透した。飛行機に乗る人々は激減し、サービス業は大打撃を受けた。

だがコロナに脅かされながらも楽しむことを忘れないのが米国人だ。彼らが飛びついたのは、感染の危険が少なく、しかも家族で移動できる手段―レクリエーショナル・ビークル(以下RV)だった。

ロサンゼルス在住の会計士の男性は、奥さんと子供二人を連れてヨセミテのキャンプ場巡りをする予定だという。「レンタル料は1日125ドルで、家族四人でホテルに一泊するよりはるかに安いです。しかもコロナに感染する危険はほぼない。その上、都会ではできない経験ができますから」と語る。


多くの米国人が彼と同じように考えている。RVでの旅行は感染の危険が少ない上に、レンタル価格も安い。大人二人用の小型のものが約100ドル、四人家族でゆったりできる大きさでも200ドル代だ。中堅クラスのホテルで大人二人、子供二人が宿泊すると二倍以上の金額になるだろう。しかも他者との接触の機会は増える。少々不自由でも、RVにはホテルの部屋と同等の設備がある。車内にはシャワーやキッチンが備えられ、快適そのもの。大きめのRVなら大人5、6人で夕飯の卓を囲むのに十分な広さである。


日本では考えられないキャンプ事情の良さも背景にある。全米とカナダを合わせた車で乗り付けられるキャンプ場の総数は1万3千を超える。http://www.uscampgrounds.info雄大な自然が満喫できる上に三密も避けられる。さらに、都会では味わえないアドベンチャー気分も満喫できる。コロナによる不自由な生活に飽いた人々の逃げ場としてこれ以上の場所はないだろう。


米国のRV人気は数字にはっきり表れている。RVレンタル仲介の大手、RVshareでは、今年4月からのレンタル予約が前年同月の十倍に跳ね上がった。https://www.bostonglobe.com/2020/05/21/lifestyle/rv-sales-rentals-are-skyrocketing-during-pandemic/

新車の出荷台数も増加した。業界団体、リクリエーショナル・ビークル・インダストリー・アソシエイションは、北米でのRVの売り上げは昨年から4.5%上昇し、約42万4千台になると予想している。乗用車で牽引するタイプの販売は、昨年9月の約2万1千台から3万台近くに増加した。しかもこれは生産が追いつかない中での数字。ディーラーが抱えるバックオーダーはこれよりはるかに多いと予想される。

https://www.rvia.org/news-insights/september-rv-shipments-31-percent


ニーズは旅行者だけではない。大手レンタル会社、クルーズ・アメリカによれば、企業や病院などへのレンタルも多いという。飛行機に代わるビジネスマンの移動手段や、全米各地に開設されたコロナ感染の検査場としても使われたそうだ。


意外な用途もある。コロナ下で在宅勤務を余儀なくされた会社員たちが、家族に邪魔されない自分専用のオフィスとしてRVをレンタルしたり、中古車を購入するケースがあるという。米国の住宅事情は日本とは比較にならないほど恵まれているが、それでも家族のいる自宅で仕事をすることに抵抗を感じる人もいる。そうした人々がRVを買い込み、自宅の庭に置いて個人用オフィスとして使うらしい。実数は不明だが、ロサンゼルス在住者によれば、住宅街の庭に置かれたRVが今年から増えたという。


もっと恐ろしげな話もある。RVがコロナに感染した家族を隔離する場所として使われるケースだ。確かに、車内だけで生活が完結するRVは、隔離先としては好適だろう。

https://www.latimes.com/business/story/2020-03-27/rv-companies-coronavirus-business


移動することを好む米国人にとって、新型コロナは日本人が感じる以上の災厄なのかもしれない。RVは、それを解決する絶好の手段ということなのだろう。RV業界は、ワクチンが開発された後もこうしたブームが継続すると考えている。米投資会社、コールバーグ・クラビス・ロバーツは、前述のRVshareに一億ドル以上の投資を行う予定だ。他のレンタル会社も、千載一遇のチャンスを逃すまいとビジネスの拡充に奔走している。落ち込み著しい航空・ホテル業界を尻目に、RVは米国人の移動手段の新たなスタンダードになりつつある。

https://www.wsj.com/articles/rising-interest-in-recreational-vehicles-helps-rental-platform-secure-investment-11603242402


出典:共同通信 47ニュース (2020年11月17日配信)


#米国 #コロナ

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