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  • 原 美和子

【世界から】ユン・ソナ長男暴行事件に見る世情 親の言動に敏感


韓国・ソウルにある名門私立小学校で起こった児童による集団暴行事件が世間を騒がせている。6月16日のSBSテレビのニュースで、この学校に在学する小学3年生の男子児童4人が、修練会(研修旅行)で1人の男子児童に対し、野球のバットでたたく、ボディーソープを飲ませるなどの暴力行為を行ったという報道がされた。さらに、加害者グループの中に財閥企業会長の孫と芸能人の息子が含まれ、この2人の児童の親が学校側に「加害者リスト」から息子の名前を外すことを要求したと指摘。財界人や芸能人、スポーツ選手の子息・子女も多く在学する名門校で起こった悪質な暴行 事件であることに加え、暴行事件の加害者の一人が日本でもタレント活動をしていたユン・ソナの長男であったことが明るみになると、驚きと怒りの声が上がった。 ▽謝罪コメントが炎上

報道を受け、ユン・ソナの所属事務所は本人の公式見解を急きょ発表。被害者児童とその両親への謝罪を述べながらも、報道内容が事実と異なり、「暴行」でなく「いたずら」と反論した。

子どものプライバシーが公にさらされることへの不快感も示し、自分と子どもの保身とも受け取れるコメントに、ネット上ではユン・ソナに対する非難や学校側の対応を疑問視する声が相次ぎ、彼女のSNSは炎上状態となった。

世間の反応に慌てたユン・ソナは再び謝罪文を公表したが、非難の声はやまず、彼女が出演するドラマの降板を求める声が相次いでいる。

事態を重く見たソウル市の教育庁が調査を行うことを発表するなど騒動が続いている。ネットの書き込みは30代~40代の子育て世代の女性によるものが多くを占め、子どもを持つ母親の立場の女性からの関心が特に高いと言える。 ▽過剰反応の親と学校

韓国では、いじめや校内暴力の防止を目的とし、今回のような暴力事件が起こった場合に迅速に対処する「学校暴力委員会」なる組織が全ての小・中・高校に置かれている。この組織は、学校と各地域の教育庁 や警察が連携していて、問題を起こした児童・生徒には調査や処罰、保護者への指導のほか、特に悪質と判断された場合は、教育庁や警察が介入することもある。

そして、事例が高校卒業まで記録として残され、進路にも影響するという厳しいものになっている。 このため、この組織の存在自体が教育現場に思わぬデメリットを生んでいるという現状もある。

それは、児童・生徒や保護者の中には、「言い争い」などちょっとした子ども同士のトラブルでも相手を「学校暴力委員会」に訴えたり、教師を批判したり、加害者側の親が処分を不服として学校に乗り込むといったケースが後を絶たないのである。

これにより、学校側も子ども同士のトラブルが起こることや、親からのクレームが入ることに非常に神経をとがらせている。 ▽うんざりする国民

ここ数年、韓国で世論に論争を巻き起こしているのが「金や権力」のある者やその子女たちの常識を逸脱した振る舞いだ。

大韓航空の副社長を務めていたチョ・ヒョナ氏は2014年、大韓航空機内でピーナツの出し方をめぐり客室乗務員に暴言、暴力行為を行い世間の非難にさらされた。チョ氏は結局、副社長の座を退き、「ナッツ姫」という不名誉な呼び名が付けられた。

昨年秋に発覚したパク・クネ前大統領のスキャンダルでは、パク氏の友人、チェ・スンシルが黒幕とされたが、その娘も一連の疑惑に批判が向けられると、SNSを通じて「文句があるなら、まず自分の親の力のなさを恨め。金も権力も実力のうちだ」と暴言を吐いた。このことが若い世代の反感を招き、パク氏の退陣を求める大規模なデモにつながった背景もある。

そして、今回の暴行事件でも「金や権力、地位」がある親たちの傍若無人な姿勢が露呈される形となった。

近年、韓国の教育現場は前述の「学校暴力委員会」の設置や「学業よりも人格の育成」を重視した教育が行われているが、子どもたちの手本となるべき親たちが身勝手な振る舞いをし、教師は親の顔色をうかがっているようでは、こうした教育策も本末転倒と言えよう。

(韓国・釜山在住ジャーナリスト、原美和子=共同通信社特約)


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